林原めぐみさんと２０年前のお願いの話

　ブログの更新は大変久しぶりで恐縮です……。

　来週の４月２０日、ファンタジア文庫より新作の戦記ファンタジー『ファイフステル・サーガ　再臨の魔王と聖女の傭兵団』が出ます。
　特設サイトはこちら。
http://www.fujimishobo.co.jp/sp/201804saga/

　すでにご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はなんと林原めぐみさんのナレーションによるＴＶＣＭが放映中です。
　YouTubeにも上がっております、こちらです。

　発売まであと一週間、ご注目頂ければ幸いです。


　以下、単なる余談なのですが。

『ファイフステル・サーガ』のＴＶＣＭをやって頂けることになったとき、担当さんにある質問をされました。

「CMナレーションの声優さん、希望はありますか？」
「え。誰でもいいんですか？」
「ええ。希望通りになるかは分かりませんが」

　もうどれだけ困ったかはお察しください。
　次々脳裏をよぎる、今をときめく声優さんの名前。が、とてもじゃありませんがその中から誰かを推薦するなんて無茶振りです。
　結局、経験のある編集部に任せようとしてたんですが、そんな折あることを思い出しました。

　西暦１９９５年前後、つまりもう２０年以上前のことです。
　当時パソコンも我が家にはまだなく、私の趣味はもっぱらゲームとラジオを聞くことでした。それでまあ、珍しくもない話ですが林原めぐみさんが出演される番組にハガキ出して採用されたことがあったんですよね。一度か二度か。

　それでハガキの最後に、「いつか一緒に仕事してください」的な事を書いたんです。ハガキの内容は別の話題がメインで、最後の挨拶のところにオマケとして書いたような話です。
（２０年経つと意外と思い出せないんですが、「小説がアニメ化したら出てください」とかじゃなくて、確か当時ゲームクリエイターを目指していたので「将来ゲーム作ったら出てください」とかそんな話だったような）

　番組も、当時ファンタジーワールドというＴＢＳラジオの番組があってよく聞いてたので「ＭＥＧＯＭＯ街に出よう」だったと思うんですが（週の真ん中水曜日！　というネタが分かるあなたはきっともう徹夜が辛い）、でもゲームクリエイターうんぬん言ってたとしたら「覇王塾」の方だったかも。東京ブギーナイトもハガキを送った覚えはあるんですが、こちらは採用されなかったような。

　というわけでそのときのことを思い出した私は、担当さんに提案してみました。

「昔これこれこういう経緯がありまして。いっそ林原めぐみさんで……」

「分かりました、一応事情を話して打診はしてみます。ただお忙しい方ですから難しいと思ってください」

　ごもっともです。なにせ林原めぐみさんと言えば昨年ついに１ｓｔライブを実行し、しかもこの話が出ていた頃はアルバム「Fifty Fifty」の発売直前で精力的に活動されていた頃りです。ところが！


「受けてくれることになりました」

　人生何がどうなるやら分かったものじゃありません。

　そして収録当日。一応立ち合ってきました。
　いやもう圧巻の一言でした。

　ベタな表現ですが、そこにいたのはブギーナイトで今も耳にするあのラジオパーソナリティめぐさんではなく、ベテラン声優林原めぐみさんでした。

　もう挨拶なんて一言で終わり、いきなり質問攻め。

「もう出てる本だったら読んでから来るんだけど」と前置きされた上で、
「このキャラはどういうキャラなの？」
「どんな背景なの？　このキャラとこのキャラはどういう繋がりなの？」
「このキャラ準拠でナレーションすると、このセリフのときちょっと敵意入っていいの？」

　答えるこちらの方が必死です。ひたすら林原さんの疑問に答える時間が続きました。
　そして完全にキャラクターと世界観を聞き出された上で、いざ収録。

　これまた凄まじかった。正直、もう最初の一回目でOKじゃないかと思ったんですが、CM製作スタッフの注文に事細かく応え、あるいは自分から質問をしてその注文意図をハッキリ認識してから再収録。時にＯＫが出てるのにご自分の演技に納得されず、自分から取り直しを提案されたり。もう素人が口を挟める状況ではなく、「あ、よろしいんじゃないでしょうか」と繰り返す人形と化す私。

　そんな経緯でできあがったのか先のCMです。

　もう今しか機会がないのでちょっとこの場をお借りします。
　すばらしいイラストを描いてくださった有坂あこさん、そのイラストを最大限活かしてくれたCM製作スタッフの皆さま、そして熱演してくださった林原めぐみさん。このCMに関わってくださったすべての方に、この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

（ただ、事情は伝わっていると聞いてはいますが、実のところ林原めぐみさんが２２年前のお願いに応えてくださったのかは定かではありません。この通りの状況だったので、「ラジオ聞いてます！」なんて話をする時間は微塵もありませんでした……！）